よりみち外科医のひとりごと

"よりみち外科医のstep up note"のセカンドブログです。

 大学院で基礎研究によりみちした外科医が、
 技術的、経済的、社会的自立を目指して
 奮闘する毎日を描いた
 ひとりごとブログです。

 

ECMOのポンプが止まって大慌て!

外来業務中に患者から
若い人は短い靴下ばかり履いて寒いだろうからと
厚手の靴下の贈り物をいただいたのですが、
今日は長めで温かい靴下を履いていますよ
と言いそうになる気持ちを押し殺して
ありがたく靴下をいただいた
”よりみち外科医”です。

>今度外来で使わせていただきます

 

私のプロフィールについては以下をご参照ください。
https://yoriste.com/profile/

 

あなたが仕事をしている中で
一番慌てるシーンはいつですか?

 

ECMOは極度の心臓や肺機能が低下した患者の
循環や酸素化をサポートする
機械的な処置です。

 

人の心臓の代わりになるほどの量の
血液を回路に引き出して
ポンプで送り出している
非常にアグレッシブなシステムです。

 

このシステムの最も怖い合併症は、
血栓がポンプに詰まって停止してしまうことです。

 

今回はこの恐怖と戦う体験を記事にしました。

 

<劇症型心筋炎にECMO>

 

劇症型心筋炎は、
ウイルス感染症などが心臓まで及んだ時に
重度の心機能障害を来してしまう
非常に恐ろしい病気です。

 

最も重症な状態だと
心臓が全く動かなくなり、
カテコラミンをいくら流そうと
反応すらしません。

 

生き残る術は
VA-ECMOによる体外循環しかありません。

 

この場合は、
サポートというよりも
完全にECMOに依存した状態であるため、
ポンプが有効に機能しない状態は
そのまま死に直結する状態となります。

 

<心臓に優しい回路>

 

通常のVA-ECMO回路は、
送血を大動脈に、
脱血を右房に
接続する回路になります。

 

大動脈の送血すると
心臓にとっては後負荷が上昇し、
拍出しにくくなるため、
左室に圧がかかって膨らんでしまうことがあります。

 

左室が拡張しきってしまうと
収縮する能力は戻らなくなるため、
回復してECMOから離脱する可能性が
低くなってしまいます。

 

この対策として
私たちは心尖部に脱血管を挿入し、
左室の血液を吸引し続けることで
左室が膨らむことを防止します。

 

このような特殊な回路を構築することで
ECMOは心臓の代わりをしながらも
心臓の回復を助ける役割も果たせるようになります。

 

 

 

<血栓が急にやってくる>

 

左室の脱血で困る
重篤な合併症の一つに
血栓塞栓症があります。

 

左室の内腔は
柵状の筋肉で覆われた複雑な形状なので
血液の乱流があれば
血栓を作ってしまう可能性があります。

 

この血栓がとんで
脱血管から吸い込まれると、
血栓はそのままECMOのポンプに辿り着き
詰まって動かなくしてしまいます。

 

<詰まったら慌てて交換>

 

回路が詰まるのは

ほんの一瞬の出来事で
その前触れなどは全くありません。

 

突如ポンプが動かなくなり、
仰々しいアラームが鳴って
周囲のスタッフが大慌てで駆けつけます。

心臓が動かない患者では
ポンプが動いていない間は心停止なので
心臓マッサージをしなければなりません。

 

しかし、
心臓に直接、
管を縫い付けている状態なので
強い心臓マッサージにより
縫合が弾けてしまえば
心臓が破裂してしまいます。

 

非常に微妙な状態で
急いでポンプの取り替えを行います。

 

私たちは24時間365日
ポンプが交換できる体制をとっていますが、
それでもやはり大慌てで
現場のボルテージは最高潮になります。

 

ECMOを管理する以上は
こういう対応も覚悟しなければなりませんね。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

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少しでもお役に立てる情報を発信していきます。

 

ひとやすみ、ひとやすみ。